Nice!Tatsuro, -Tatsuro Yamashita Mix-解説
Nice!Tatsuro, -Tatsuro Yamashita Mix-
山下達郎の楽曲はいつも自分を何処かに素敵な場所へ連れてってくれる感覚を与えてくれる。
ドライブ中やクラブ、はたまたヘッドホンの中で、山下達郎の音楽の世界に浸って、まるでトリップする感覚。
そこは、清涼感漂うリゾートだったり、僕が生まれてもいないような時代の風情だったり。
それは時にカラフルな歓楽やセピア色の風景をもって心が染められていく。
そして山下達郎の音楽に一旦浸ってしまえば、今度は彼の都会的な音楽性だけでなく、音楽作りに対する拘りと独自の制作姿勢のストイックさに魅了される。
こうした山下達郎の音楽は数十年経っても色褪せていないし、これからもしばらくの間そうだろうと思う。
僕は友人のおかげ(本当にありがとう)もあって毎年行われているホールライブや、レアなライブハウスでのライブなんかを観に行かせてもらう機会を与えてもらっている。ライブが終わった後の余韻といったら、それはもう言い表しようのない素晴らしさだ。
往年の歌手がキーを下げたりしてなんとか歌っているのに対して、山下達郎は声量も声質も、昔の音源と全く変わらない。ライブ会場は音質・音響にこだわる故、大きな会場では行われることはほとんどないし、中規模なホールが殆どだ。コーラスやバックバンドもいつも同じメンバーで固め、年々演奏のクオリティを高めている。付け加えれば、MCもかなり面白い。
完成度と満足度が非常に高いので、みなさんにも絶対に行ってもらいたいとおもいます。
さて、出尽くした感のある山下達郎オンリーのDJミックス制作にあたっては、色々と悩みました。
どうやって作ろうか。
バージョン違いや、未発表曲など含めると相当な作品数があって最初は全ての曲をできる限り全部詰め込んで短めに繋いでいくのも考えたが、それでも長くなりすぎる。個人的に好きな曲を選ぼうとしても枚挙に暇がないし…。
それじゃあ音質がなるべく均一になること、ミックスに無理がないことを意識しながら、入れたい曲をなるべく入れていこうと考えました。
一方で一曲の中の展開も捨てられず…最初セットリストを作った段階では2時間半くらいの構想になってしまいました。そこから悩みに悩んで苦しみながら取捨選択をしていった結果、割りかしオーソドックスなミックスになってしまいました。(トホホ
一発録りということは途中でミスってしまった場合は最初からやり直し。納得いかない場合もやり直し。次に繋ぐ曲をモニターできない状態での作成だったので曲を覚えて、何度も何度もやり直して苦労して完成させたので、そこそこまともなミックスになっているんじゃないかなぁとは思います。(何箇所か直したいと思う部分もありますが、多少はね…うん。)
それではナイスな達郎さんをお聴きください!
以下は解説です。
※アルバム名は『』付、ミックス内の時間は音が聞こえ始めるところから【】付きで紹介しています。
1.日立マクセル UDカセットテープ (“RIDE ON TIME”) ('80)
【0:00~】
山下達郎 作詞・作曲
『山下達郎CM全集 Vol.1』に収録。山下達郎が過去に手がけてきたコマーシャル作品の中から選曲された、CM作品集。Vol.2もあり、ファンクラサイトから購入可能。
本ミックスは'80年秋にオンエアされたアカペラ・ヴァージョンの30秒サイズで、15秒サイズはアルバム『RIDE ON TIME』に収録されている。
2.RIDE ON TIME(SINGLE VERSION) 【0:29~】
RIDE ON TIME(ALBUM VERSION)【4:28~】
山下達郎 作詞・作曲・編曲
この曲は青山純・伊藤広規・椎名和夫・難波弘之というラインアップでの最初のレコーディング曲。リズムパターンは青山・伊藤・難波の3人に山下を加えた4人で練習スタジオに行き、何日もかかって全員の意見を取り入れてリズム・パターンを決定したという。シングルとアルバムでは全く演奏が異なり、アルバムバージョンはほんの少しテンポが遅い。シングルバージョンでは、歌いだし~1番目のサビにいたるまででシングルはサビ直前にブラスが乗り、主にAメロにマリンバの差込があるが、アルバムバージョンはない。一方アルバムヴァージョンでは間奏に吉田美奈子のバックコーラス「Take a ride on time」のフレーズが続きフェードアウトしていく。本MIXにおいては両方を採用。シングルバージョンで始まり4:28~からアルバムバージョンに切り替え、またそこが次のSILENT SCREAMERへ繋がっている。「Take a ride on time」の声とSILENT SCREAMERのベース音がうまく乗るように工夫しています。
ちなみに1976-1982『THE RCA ⁄ AIR YEARS LP BOX 』に詞・曲違い別ヴァージョン デモが収録されている。この曲は後に<ONE MORE TIME>という詞がつけられ、近藤真彦のシングル「永遠に秘密さ」のカップリング曲になっている。
3:SILENT SCREAMER【4:46〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
『RIDE ON TIME』の3曲目。ポリリズム・ファンクの一曲。山下によれば、ライブでの効果を意識した作品なのでさすがにサウンドはもう古い感じがするが、リズムの組み立て方はセオリーに基づいた正当なものだと思うという。この曲と次の「BOMBER」とクラブライクな曲を続けた。
4:BOMBER【8:12〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
続いてもポリリズム・ファンクの一曲。『GO AHEAD!』の6曲目。
当時、ポリリズム・ファンクに耽溺していたので、こういった曲調を一度やってみたかったというだけの作品だったという。
山下によれば「当時、僕は完全にアイズレー・ブラザーズのフリークだったから、ああいうハード・ファンクをやってみようと思って作ったら、大阪のディスコで大ヒット。アメリカン・ポップスの男が一転して、16ビートの実践者になってしまった。しかし、本人にとってはこの曲で踊れるということが不思議でならなかった」と振り返る。
この頃、山下への音楽的評価は決して低いものではなかった。CM音楽等において、匿名性の下で活動する作家・ミュージシャンとしての山下の需要は高かったが、レコード会社の契約ミュージシャンとしての山下への評価は低く、「技術はあるがセールスの数字が期待できない」という状況であった。「これが最後になるかもしれない」という思いの中、このBOMBERのヒットにより山下はソロミュージシャンとしての山下のキャリアは大きく加速することになった。
5:LET'S DANCE BABY【11:00〜】
吉岡治 作詞 /山下達郎 作曲・編曲
元々は、ザ・キング・トーンズのために書き下ろされた曲。東芝のディレクターからの依頼され、既に出来ていた3曲分の歌詞を渡された。吉岡治の詞2曲と、クリス・モズデルの英語詞が1曲。そのうちのひとつがこの曲だった。“心臓に指鉄砲”の箇所にシャレで入れたピストルのSEを、ある時2人の客がクラッカーで真似をして、それが全国に拡がっていったエピソードとともに、その後もライブでのレパートリーとして取り上げられている。ちなみにライブではクラッカーのタイミングを間違える人が多発し、山下がニヤッとするシーンがよく見受けられる。
6:踊ろよ、フィッシュ【14:35〜】
山下達郎 作詞・作曲
全日空の沖縄キャンペーンのイメージ・ソングとして書き下ろされた曲。『僕の中の少年』5曲目。
「山下達郎の夏向けのヒットを再び出そう」という、スタッフ14~5人のプロジェクト・チームのブレインストーミングでまず「踊ろよ、フィッシュ」のタイトルが決められ、代理店のOKをもらったという。ミックスでは歌い出しからカットインでも良かったが、イントロの「はじまる感」が好きなのであえて残したが、かなりズレてしまった。残念。
私事ながらこの曲がクラブでかかると奥さんが楽しそうに踊るのが好きだ。
7:プラスティック・ラブ【18:25〜】
竹内まりや 作詞・作曲/山下達郎 編曲
本曲は竹内まりやのカバー。
1981年に発表されたライブアルバム『JOY –TATSURO YAMASHITA LIVE–』から。
「プラスティック•ラブ」は1981年末に音楽活動を休止した竹内まりやが、本格的に復帰すると共に、シンガーソングライターとして実質的な第一歩を踏み出した『VARIETY』に収録された一曲。休業中に竹内が書きためた曲の高いクオリティに山下が大いに驚き、リリースを勧めたという。
この曲は近年シティポップの再評価の流れの中で海外を中心にリバイバルし、再ヒットしている。
MIX内唯一のライブ音源だが、音質も良かったので組み入れることができた。ライブ版のためテンポも一定せず、モニターのない環境では大変苦労した。
8:メリー・ゴー・ラウンド【21:43〜】
山下達郎 作詞・作曲
『MELODIES』6曲目。
この曲や「あしおと」などは、ドラム、ベース、山下のキーボードという3人でベーシック・トラックが作られ、それにギターやパーカッション、多重コーラスを加えて完成させるという方式でレコーディングされていた。この時代、アルバムに必ず収録されていたファンク路線の曲も自分で歌詞を書くとレイ・ブラッドベリ的な世界という内容になり、本作中、詞に関して最も気に入っている作品だという。詞は恋人と二人で夜中に遊園地に忍び込んでいくというイメージで、途中に出てくる「色褪せた水玉のベンチ」は、昔後楽園ゆうえんちに実際にあったものがモチーフになっている。レコーディング当初、間奏にはサックスやギターのソロを入れようと試したがどれも今ひとつしっくりこなかったため、コーラスのみで仕上げられた。当初、スタッフには曲中のカウベルを模したボイスパーカッションが極めて不評だったという。
9:LOVE TALKIN' (Honey It's You)【25:18〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
この時期、山下は青山純と伊藤広規と3人で練習スタジオにこもってリズム・パターンを開拓していて、その中から生まれた作品。
10:DAYDREAM【29:40〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
『RIDE ON TIME』2曲目。
山下によれば吉田美奈子が彼に提供した詞の最高傑作だとし、日本語の乗りにくい細かな譜割りのメロディーをクリアするために、アクリル・カラーのチャート表から詞を作り上げる発想は彼女以外には出来ないワザだという。ライブ映えする曲ということで、その後も数多く演奏されている。
11:新(ネオ)・東京ラプソディー【32:39〜】
山下達郎 作詞・作曲
『僕の中の少年』1曲目。
もとは『POCKET MUSIC』のストック曲。フレディ・ハバードのアルバムを聴いてフリューゲルホーンが入った曲を作ろうとしたが、途中でハーモニカも加えることにしたという。「歌詞が浮かばず、夏の暑い日に都心環状線を2周して構想を考え、(目黒線の)天現寺で下り、有栖川公園で車を停めてアウトラインを書き、家に帰って膨らませた」と語っている。また、曲のタイトルを決めた時に「東京ラプソディ」の一節を曲の最後に入れる事を思いついたが、著作権法確立前の昭和11年(1936年)の曲のため、高額なロイヤリティを要求され、一時はどうなることかと思った、とも語っている。このアルバムを制作していた頃は、ビデオや上映会通いなどで戦前の日本映画を数多く観ていた時期であり、そこから生じた昭和初期の文化へのシンパシーと、異なる時代を生きる自分と照らし合わせてみたいとの思いから、この曲を作ったという。
12:INTERLUDE I【36:01〜】
山下達郎 作曲
「INTERLUDE I」「INTERLUDE II」とも、曲間に挟むために作られた短いインスト・ナンバー。未使用に終わったが、このアイデアはアカペラのインタルードに変更され次作『FOR YOU』で実現した。1990年に『RIDE ON TIME』リマスター盤にボーナストラックとして収録された。
本MIXにおいては本来の意図である転換として、また前曲の新(ネオ)・東京ラプソディーのフェードアウトにも変化をもたせたかったことから使用した。
13:夏への扉 (The Door Into Summer)【36:57〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
『RIDE ON TIME』5曲目。
もともとはキーボードの難波弘之が全曲お気に入りのSF作品とその作家に捧げたモニュメント・アルバム『SENSE OF WONDER』に提供曲した曲を山下自身でレコーディングしたもの。アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインの同名小説のストーリーをもとに吉田美奈子が詞を作り、山下が曲を当てはめた。歌詞の「ピート」は主人公が飼っている猫、「リッキー・ティッキー・タビー」は主人公の親友マイルズの義理の娘、フレドリカ・ヴァージニア・ハイニック・・・通称リッキー。小説中で主人公がリッキーに書く手紙には、いつも「親愛なるリッキイ・ティッキイ・テイヴィー」と書いてある。この「リッキー・ティッキー・タビー」は極めて英文学的で、もともとはディズニーの「ジャングル・ブック」の原作に出てくるマングースの名前である。
この曲から街物語まで(DACERは除く)似たようなベースラインが続くので、奏者による違いやドラムとの対比など楽しんで聴いてもらいたい。
14:RAINY WALK【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
『MOONGLOW』3曲目。
プロデュースを手がけたアン・ルイス用のストック曲だったが、気に入っていたので譲ってもらい、自分用に仕上げた曲だというシカゴ・ソウルのスタイルのナンバー。高橋幸宏・細野晴臣・松原正樹・佐藤博でリズムが刻まれる。ドラムは、途中からタムがオーバーダブされ、フェードアウトに向かうところではリズムパターンが微妙に変わる。前曲とベースのリズムが似てるけど若干違うので、少しのズレで大きな違和感を感じてしまう。ミックスで苦労したポイントでした。
15:あまく危険な香り【:〜】
山下達郎 作詞・作曲・編曲
もともとはドラマ主題歌として制作されたため、シングル盤のみで、スタジオアルバムには収録されていない。そのため『GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』に収録されている。もともとは誰かベテランのシンガーに歌ってもらうことを目論んで作った曲だったが、ディレクター小杉理宇造の勧めで自分自身のシングルとして発表することになった。間奏の低音のピアノのフレーズ等、それまでなかった“アダルト路線”の曲調が逆に新鮮に感じてもらえたようだという。
16:PAPER DOLL【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
『GO AHEAD!』8曲目。
シングル用にと1978年春にレコーディングされた作品だったが、レコード会社に「売れない」とシングル発売を拒否された。この曲は「BOMBER」で説明したように当時山下にとっては不遇な時代であり、メディアに対する憂鬱からペシミズムに満ちた一曲。ギター・ソロも山下自身の演奏だが、ワウが不得手なので、後からペダルを手で動かしている。楽器のソロ回しがしやすいことから、ライブでよく演奏されている。
17:DANCER【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
『SPACY』5曲目。
都立竹早高校在学時に北朝鮮に帰国したブラスバンドの先輩を思って書いたという。村上による独特な16ビートのパターンに、山下のアレンジによるストリングスとFender Rhodesが奏でるクロースな和音が乗ることで、奇妙な閉塞感に包まれたサウンドが構築されている。
後に、デフ・ジャムの女性シンガーニコル・レイは、この曲のトラックをほぼそのまま使用し、同じくデフ・ジャムに所属しているビニー・シーゲルをフィーチャーした"Can't Get Out Of The Game"というブレイクビーツナンバーを2004年に制作。彼女のアルバムに収録予定であったが頓挫している。海外では非常に人気が高くレコードは高額で取引されている。
その他サンプリングとしてはD.I.T.C.クルーの中核を担うShow & AGのAGがParty Artyをfeat.したB2「Party Hard, Hustle Hard」を2010年にリリースしている。
上記のタイトルを載せておく。
「Nicole Wray / Can't Get Out The Game feat. Beanie Sigel」
「A.G. / Party Hard, Hustle Hard」
18:街物語【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
『Ray Of Hope』4曲目。
狭い路地を舞台にした若い人たちの恋心を、私の世代から見つめると、そこには数十年前の私がいる。長い年月や年齢の壁を軽々と越える、同じ街を生きる者の変わらぬ息づかい。それを歌にしたかった」と書いている。
ミックス制作当初はベースラインの類似性からPAPER DOLL の後だったが、音質がかなり異なるので順番を入れ替えた。
19:WINDY LADY【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
『CIRCUS TOWN』2曲目
もともとはシュガー・ベイブ後期のレパートリーだったが、レコーディングの機会がなく1976年アメリカ、NY、LAで録音された『CIRCUS TOWN』に収録することになった。
山下はシュガー・ベイブのメンバーとして1973年にプロ活動を始めたが、3年後の1976年に解散、仕方なくソロになったという。バンド解散による精神的ダメージと、シュガー・ベイブで目指した1960年代テイストやレコード・マニア的趣味性が当時の日本の音楽状況にまったく受け入れられなかったことへの挫折感から、自分がこの先どうすればいいか、まったくわからなかったという。ソロでやって行くにしても、どこか客観的な立場に一度身を置いて自身の音楽的力量を判断してみないことには前に進めない。これがソロ・アルバムを海外で録音しようと思い立った理由だった。間奏のサックスはマンハッタン・ジャズ・クインテットのメンバー、ジョージ・ヤングによるもの。
20:LOVE SPACE【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
『SPACY』1曲目。
イントロ冒頭の佐藤博のピアノのフレーズは、佐藤が本番になっていきなり思いつきで弾き始めたものだという。このアルバムの最初にレコーディングされた曲。ライブで演奏しやすいという理由から、16小節のテーマがひたすら繰り返されるという趣向の作品というのを以前から作ってみたくて書き下ろされた。
21:MUSIC BOOK【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
『FOR YOU』2曲目。
吉田美奈子がノートに書きとめていた“ミュージック・ブック”という一節から書き起こされた作品。アルバムの色合いにバリエイションを出そうという目的で、この曲だけ異なるリズム・セクションでレコーディングされている。全曲同じメンバーでも良かったとも思うが、これはこれで好きな演奏だという。
22:CIRCUS TOWN【:〜】
作詞:吉田美奈子/作曲:山下達郎
『CIRCUS TOWN』1曲目
ニューヨークでよく演奏されていた16ビートの曲をこの曲で再現した。ニューヨークをイメージした曲。間奏のサックスはブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ末期のメンバーで、ブルース・ブラザーズ・バンドに参加したことでも知られるルー・マリーニ(英語版)。冒頭にピッコロで演奏されるパッセージは、ユリウス・フチークの「剣闘士の入場」と思われる。
23:あしおと【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
「MELODIES(メロディーズ)」の8曲目。
夕暮れ時に見かける女性への淡い恋心を歌った曲。山下自身、気の弱い男の片想いの歌は大好きで、この曲は盛り場のストリート・サイドにある花屋の店員が主人公という設定のシカゴ・ソウル風味の作品。いつも夕暮れ時に店の前を通り過ぎる会社帰りのOLへの淡い恋心の歌である。
秘めた思いをどこか物悲しいテンポ感のあるメロディーにのせている。
24:SOLID SLIDER【:〜】
作詞:吉田美奈子/作曲:山下達郎
『SPACY』10曲目
当時のいわゆるAORの線をねらった一曲。この時代はレコーディングに使える予算と時間が限られていたため、短時間で演奏をまとめやすい曲作りを心掛けていたという。いかにアイデアのあるリズム・パターンを考え出せるか、この曲もその典型だという。ショートバージョンとロングバージョンがあり、本MIXにおいてはロングバージョンの途中でサックスソロ省略化、シングルバージョンでは収録されていない坂本龍一のピアノソロに繋いでいる。ドラムに上原裕、ベースに田中章弘。坂本龍一のエレクトリックピアノと、吉田美奈子のコーラス。エレキギターは大村憲司。ロングverは聴きどころが多く捨てがたい。
25:SPARKLE【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
友達から5万円で購入しサブギターとして1980年に購入した茶色のフェンダー・テレキャスターが山下にとって運命的な大当たりとなり、このアルバム以降すべてのレコーディングとライブで使われることになる。山下自身も後に代表作と語るこの曲は、このギターの音色を生かした曲を作りたいとの思いから書かれたもの。ライブでもオープニング・ナンバーとして数多く演奏されている。また、2002年リリースのBOOのシングルsmile in your face-Featuring Muroでこの曲が大胆にサンプリングされている。
26:DOWN TOWN【:〜】
伊藤銀次 作詞/山下達郎 作曲
シュガーベイブ『SONGS』の2曲目。
元々はキング・トーンズ15周年記念アルバムに提供する予定だった曲。その企画自体が立ち消えになったため、シュガー・ベイブがナイアガラ・レーベルからレコーディングに入るという話が決まったため『SONGS』のレコーディング曲に加えることとなった。
27:SUNSHINE -愛の金色-【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲
『MOONGLOW』8曲目。
シンプルに刻む8ビートで淡々とした印象ながらも、難波弘之PLAYによるピアノがさり気なくオシャレ気持ちいい。
『FOR YOU』発売時、プロモーション用にピクチャー・レコードが制作され、そのB面用に作られたテープ編集によるメドレーである「9 MINUTES OF TATSURO YAMASHITA」(『GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』に収録)ではこの曲のサビの”サンシャイン”の”サ”から”サイレントスクリーマー”にカットインで繋げられており、山下的には遊び作ったという話だが、工夫が面白く必聴だ。
28:LOVELAND, ISLAND【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
『FOR YOU』7曲目
元々は、ビールのCMのため書き下ろされた楽曲で、ブラジルの路上で踊る女性のフィルムを観てBPMを算出し、そのテンポに合わせて作られた。
山下によれば「サンバとマイアミTKビートを合わせたような曲調と1人多重コーラスの世界は、
"夏だ、海だ、タツローだ!"という当時のリゾート・ミュージックとして山下達郎音楽のまさに典型だった。」という。
ちなみにこの曲のPVで、キレのあるステップでMJ風のダンスをしているのはジャニーズの東山紀之。
29:FUNKY FLUSHIN'【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲
「永遠のFULL MOON」5曲目。
「FUNKY FLUSHIN'」は「BOMBER」の路線で、よりポップなメロディーを、という意欲から生まれた曲。以後数年間、山下はこうしたポリ・リズムのパターン・ミュージックを作り続けて行くが、リズムの構築という点ではこの作品に一番愛着があるという。このトラックはリズム隊の録音グレードや毎夜の徹夜の歌入れで声のコンディションがいまひとつだったことなどが心残りで、通常再録音に否定的な見解を取っている山下としては珍しく『GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』で1982年に再録されている。
本ミックスでは、再録版はリバーブがかなり効いており、他の曲とのバランスを考え1979年のオリジナル版を使用している。
30:愛を描いて –LET'S KISS THE SUN【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
シングルとしてリリースされ、後にアルバム『MOONGLOW』10曲目に収録。山下にとって初のシングル・タイアップ。曲がなかなか作れず、スタジオに向かう車の中で、もうダメ、出来ませんでしたと土下座するしかないと、原宿の交差点に差しかかった時、ポッ、とフックが湧いて出て助かったという、冷や汗の想い出とともにある曲だという。
31:高気圧ガール【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
『MELODIES』2曲目。
イントロをアカペラとパーカッションでスタートするアイデアはずっと前から持っていたが、実際に試みたのはこの曲が最初。MIX内では、山下の試みを不意にする形なので気が引けたが、都合上イントロはカットしている。高気圧の溜息は竹内まりや。
32:パレード'82リミックス・ヴァージョン【:〜】
山下達郎 作詞・作曲•編曲
「パレード」は、ナイアガラ・トライアングル(大滝詠一、伊藤銀次、山下達郎)のオムニバス・アルバム『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』に収録。フジテレビ系『ポンキッキーズ』のエンディングテーマ使用を機にシングル・カットされたが、イントロのピアノ・ソロとエンディングの“お祭りSE”がカットされている“'82リミックス・ヴァージョン”で収録された。本ミックスではリミックスバージョンを使用している。
元々は、シュガー・ベイブ時代のレパートリーとして1974年春頃に作られた作品。レコーディングの話が持ち上がった際、大滝からシングル向けの曲を書くように依頼され書いたものの「シングル向きではない」と言われたことから、シュガー・ベイブでは正式にレコーディングされなかった。その後、「捨てておくにはもったいないし、かと言ってシュガー・ベイブのサウンドとしてはもう古い感じなので」としてアルバム『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』に山下のソロ作品として収録された。山下によれば「もっとも、当時はシングル発売といったって、ヒットなど夢のまた夢という時代だったから、言う方も言われて作る方も、しごく観念的な話でしかなかった」とし、「コタツの中で安物のワインを飲みながら一晩で書いた記憶がある。ギターで曲を作ったから、ああいうビート感が出たのだ」という。
僕の結婚式の退場曲に使用されたことはあまりにも有名。思い出も重ねてこの曲を最後にした。
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