Mix of Tatsuro Yamashita (New Remaster)


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「Mix of Tatsuro Yamashita (New Remaster)」


■今回リマスター版製作の背景

(本編記事及びリマスター版の音源は2020年6月に作成しましたが、2021年8月にリマスター版の音のバランスを変更しました。さらに2022年10月に再調整行いました。
それに伴い、過去2回の旧リマスター版についてはMIX cloud上からも消去させて頂きました。新しい方を是非ご視聴ください。古い方なんでか伸びちゃう。)

約一年前に山下達郎のミックスを作りました。(もうそんなにたつのか)
大変ありがたいことに、再生回数も伸び、みなさんから沢山の感想をいただけて、自己満足に陶酔しておりました。ミスはあれど、自分的にもお気に入りのミックスなんです。

基本的にミックスについては自分の中では一発録りにこだわっているのですが、特にヤマタツミックスは何度も録り直した記憶があります。そのため正直ちょっとミスったなーというところも、大勢に影響のないミスについては諦めていました。ただミックスを公開してからしばらく経ってみて、いくつかの心残り(繋ぎのミスやノイズ等)があったので、出来るだけの修正しました。
本当は低音をバキバキにしてクラブライクにすることも考えたのですが、山下達郎の素晴らしい歌声を強調したくて、ボーカルが主軸になるように再調整しました。
また音質についても色々時間と手間をかけてかなり向上させましたので、今回[New Remaster]版という形で再リリースさせて頂いた次第です。
ただ、mixcloudに上あげるとどうしても音質は劣化してしまうので、ご連絡いだだければデータでお送りします!

音質については、音圧の一定化と、ぼやけてしまったメリハリ(音像輪郭とエアー感)を調整しました。またミックスする中で失われてしまったダイナミズムをあくまで原音重視で再構築することもでき、生演奏感もプラスしたので、奥行きを感じながら聴き込む事ができるのではないかと思います。
どんな環境でも聴いていただけるように、音にはとことんこだわりましたので、高級なスピーカーは勿論、安めのイヤホンなんかでも柔らかく良い音で聴けるんじゃないかなと思います。(音割れはすいません)

ちなみに過去のヤマタツミックスは納得していないながら、折角沢山聴いて頂きましたし、当時のものは当時のものとして、クラウド上に消さずに残しておくので、どこが変わったか気になる方はチェックしてみてください。(そんな人、いるわけないか)


■はじめに

山下達郎の楽曲はいつも自分を素敵な場所へ連れてってくれる感覚を与えてくれる。
ドライブ中やクラブ、はたまたヘッドホンの中で、山下達郎の音楽の世界に浸って、まるで何処かにトリップする感覚。
そこは、清涼感漂うリゾートだったり、僕が生まれる前の時代の風情だったり。
それは時にカラフルな歓楽や、セピア色の風景を目前に想起させる。
一旦、山下達郎の音楽に浸ってしまえば、彼の都会的な音楽性だけでなく、音楽作りに対する拘りと独自の制作姿勢のストイックさに魅了されてしまう。
こうした山下達郎の音楽は数十年経っても色褪せていないし、これからもしばらくの間そうだろうと思う。

ここで一旦、ライブの話をしたい。
山下達郎は今も声量も声質も、昔の音源と全く変わらない。ライブ会場は音質・音響にこだわる故、大きな会場では行われることはほとんどないし、大きいっといっても中規模なホールが殆どだ。
コーラスやバックバンドもいつも同じメンバーで固め、年々演奏のクオリティを高めている。付け加えれば、MCもかなり面白い。公演時間もかなり長い。あれほど満足して会場を出ることができるライブも少ないだろうと思う。
僕は友人のおかげ(本当にありがとう)もあってほぼ毎年行われているホールライブや、ライブハウスでのレアなライブなんかを観に行かせてもらう機会がある。ただどんなライブであっても終わった後の<あの>余韻は、それはもう言い表しようのない高揚感というか。ぐっと、ほんの数分か数時間前の記憶を噛みしめながら味わい深い時間を過ごすことができるのだ。
こうした感覚をミックスからも感じられたら…というのがこのミックス制作理由の一つです。

さて、出尽くした感のある山下達郎オンリーのDJミックス制作にあたっては、当然色々と悩みました。
どうやって作ろうか。いま思い返してみれば、普段ミックスを作ろうとする時よりは、丁寧に段階を踏んだと思う。
何はともあれまずは選曲だ。と、ひとまず曲をリストアップ。バージョン違いや、未発表曲など含めると相当な作品数があって最初は全ての曲をできる限り全部詰め込んでメガミックス的に短めに繋いでいくのも考えたが、それでも長くなりすぎる。個人的に好きな曲を選ぼうとしても枚挙に暇がないし…。
悩み抜いた上、それじゃあと、音質がなるべく均一になること、ミックスに無理がないことを意識しながら、入れたい曲をなるべく入れていこうと考えました。
一方で一曲の中の展開も捨てられず…
最初セットリストを作った段階では3時間半くらいの構想になってしまいました。
そこから悩みに悩んで苦しみながら取捨選択をしていった結果、割りかしオーソドックスな選曲になってしまいました、というのが結局のところで、このやり方だとみんな同じようなところにたどり着いてしまうのだろうなというのが本音です。

じゃあどうしようかと、次に大事なところが、繋ぎ方。DJたるものやはりただ単に繋げれば良いというものじゃない。
新しさや面白味がなければ、作る意味がないと、自分に鞭を打ち、ここもかなり試行錯誤し構成していきました。安易にカットインやフェードアウトを利用せず、MIX部分をなるべく長めにとって曲間の流れやグルーヴ感を大切に繋ぐよう努力しました。それはある種、良い意味でかなり攻めた繋ぎになっているとは思います。このミックスはむしろそこを聞いてもらいたい。DJをしている人なら、なるほどなーって思ってもらえるポイントがいくつかあるかなーとは思います。

ヤマタツオンリーのミックスはこの世にいっぱい存在するけれど、差別化するとしたらそれくらいかなと個人的には思っています。ミックス製作に取り掛かる前に他人のミックスを聴いてしまうと、変に真似事をしてしまうリスクがあったので、避けていましたが、作った後に他の人のを聴いてみると、思ったよりも人それぞれ違いが明確で面白かったですね。笑 「そこそう繋ぐかー」っていうのもあれば、「そこ、そうなるよね」っていう。
前述したように繋ぎは攻めたので、音が混雑しているところもかなりありますが、ある程度はもう、許してほしい。(曖昧...)

そしてもう一つのこだわりは、一発録り。
一発録りということは途中でミスってしまった場合は最初からやり直し。納得いかない場合もやり直し。しかも次に繋ぐ曲をモニターできないというミックス作る上では「異常な」環境での製作だったということもあり、繋ぎ方を覚えて、何度も何度もやり直して苦労したことは確かなので、聞き応えはあるのではないかと信じます。

使用曲は主に31曲。

(実はいろいろなバージョン違いを組み合わせて一曲として使っている部分もあるので厳密にいうともう少し多いです。)


色々と書きましたが、僕の魂のヤマタツミックスですので、電車の中やドライブなんかで楽しんで頂ければなと思います。


以下は解説です。
※アルバム名は『』付、ミックス内の時間は音が聞こえ始めるところから【】付きで紹介しています。

1.日立マクセル UDカセットテープ (“RIDE ON TIME”) ('80)
【0:00~】
山下達郎 作詞・作曲
『山下達郎CM全集 Vol.1』に収録。山下達郎が過去に手がけてきたコマーシャル作品の中から選曲された、CM作品集。Vol.2もあり、ファンクラサイトから購入可能。
本ミックスは'80年秋にオンエアされたアカペラ・ヴァージョンの30秒サイズで、15秒サイズはアルバム『RIDE ON TIME』に収録されている。

2.RIDE ON TIME(SINGLE VERSION) 【0:29~】
RIDE ON TIME(ALBUM VERSION)【4:28~】
山下達郎 作詞・作曲・編曲
この曲は青山純・伊藤広規・椎名和夫・難波弘之というラインアップでの最初のレコーディング曲。リズムパターンは青山・伊藤・難波の3人に山下を加えた4人で練習スタジオに行き、何日もかかって全員の意見を取り入れてリズム・パターンを決定したという。シングルとアルバムでは全く演奏が異なり、アルバムバージョンはほんの少しテンポが遅い。シングルバージョンでは、歌いだし~1番目のサビにいたるまででシングルはサビ直前にブラスが乗り、主にAメロにマリンバの差込があるが、アルバムバージョンはない。ブラスの深く、インパクトのある入りが特徴的だ。一方アルバムヴァージョンでは間奏に吉田美奈子のバックコーラス「Take a ride on time」のフレーズが続きフェードアウトしていく。どちらも捨て難く本MIXにおいては両方を採用。
シングルバージョンで始まり4:28~からアルバムバージョンに切り替え、またそこが次のSILENT SCREAMERへ繋がっている。
吉田美奈子の「Take a ride on time」のコーラスとSILENT SCREAMERのベース音がうまく乗るように工夫しています。
このMIXの最大のこだわりポイントであり、1番の聞き所です!イントロのコーラスから始まってシングルバージョン→アルバムバージョンに切替わり、かつSILENT SCREAMERに繋がるこの構成を「おぉ〜」って思ってくれたらすごく嬉しい。つなぎの作業的にはかなり忙しいです。笑

ちなみに1976-1982『THE RCA ⁄ AIR YEARS LP BOX 』に詞・曲違い別ヴァージョン デモが収録されている。この曲は後に<ONE MORE TIME>という詞がつけられ、近藤真彦のシングル「永遠に秘密さ」のカップリング曲になっている。 

3:SILENT SCREAMER【4:46〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
『RIDE ON TIME』の3曲目。ポリリズム・ファンクの一曲。山下によれば、ライブでの効果を意識した作品なのでさすがにサウンドは古い感じがするが、リズムの組み立て方はセオリーに基づいた正当なものだと思うという。この曲と次の「BOMBER」とクラブライクな曲を続けた。

4:BOMBER【8:12〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
続いてもポリリズム・ファンクの一曲。『GO AHEAD!』の6曲目。
当時、ポリリズム・ファンクに耽溺していたので、こういった曲調を一度やってみたかったというだけの作品だったという。
山下によれば「当時、僕は完全にアイズレー・ブラザーズのフリークだったから、ああいうハード・ファンクをやってみようと思って作ったら、大阪のディスコで大ヒット。アメリカン・ポップスの男が一転して、16ビートの実践者になってしまった。しかし、本人にとってはこの曲で踊れるということが不思議でならなかった」と振り返る。
この頃、山下への音楽的評価は決して低いものではなかった。CM音楽等において、匿名性の下で活動する作家・ミュージシャンとしての山下の需要は高かったが、レコード会社の契約ミュージシャンとしての山下への評価は低く、「技術はあるがセールスの数字が期待できない」という状況であった。「これが最後になるかもしれない」という思いの中、このBOMBERのヒットにより山下はソロミュージシャンとしての山下のキャリアは大きく加速することになる。いやはや、bomber有り難し。

5:LET'S DANCE BABY【11:00〜】
吉岡治 作詞 /山下達郎 作曲・編曲
元々は、ザ・キング・トーンズのために書き下ろされた曲。東芝のディレクターからの依頼され、既に出来ていた3曲分の歌詞を渡された。吉岡治の詞2曲と、クリス・モズデルの英語詞が1曲。そのうちのひとつがこの曲だった。“心臓に指鉄砲”の箇所にシャレで入れたピストルのSEを、ある時2人の客がクラッカーで真似をして、それが全国に拡がっていったエピソードとともに、その後もライブでのレパートリーとして取り上げられている。ちなみにライブではクラッカーのタイミングを間違える人が多発し、山下がニヤニヤとしながら歌うシーンがよく見受けられる。

6:踊ろよ、フィッシュ【14:35〜】
山下達郎 作詞・作曲
全日空の沖縄キャンペーンのイメージ・ソングとして書き下ろされた曲。『僕の中の少年』5曲目。
「山下達郎の夏向けのヒットを再び出そう」という、スタッフ14~5人のプロジェクト・チームのブレインストーミングでまず「踊ろよ、フィッシュ」のタイトルが決められ、代理店のOKをもらったという。ミックスでは歌い出しからカットインでも良かったが、イントロの「はじまる感」が好きなのであえて残したが、かなりズレてしまった。残念。
私事ながらこの曲を支える太いベース音とこの曲がクラブでかかると奥さんが楽しそうに踊るのが好きだ。

7:プラスティック・ラブ【18:25〜】
竹内まりや 作詞・作曲/山下達郎 編曲
本曲は竹内まりやのカバー。
1981年に発表されたライブアルバム『JOY –TATSURO YAMASHITA LIVE–』から。
「プラスティック•ラブ」は1981年末に音楽活動を休止した竹内まりやが、本格的に復帰すると共に、シンガーソングライターとして実質的な第一歩を踏み出した『VARIETY』に収録された一曲。休業中に竹内が書きためた曲の高いクオリティに山下が大いに驚き、リリースを勧めたという。「コンピューターのプログラミングのように恋を操る女」という設定で歌詞が書き上げられており、「出逢いと別れ 上手に打ち込んで」というのはコンピューターに打ち込むという意味である。
近年シティポップが海外を中心にリバイバルし、シティポップの再評価の流れがあるがまさにこの曲はそのアイコン的な存在と言える。
MIX内唯一のライブ音源だが、音質も良かったので組み入れることができた。ライブ版のためテンポも一定せず、モニターのない環境での繋ぎには大変苦労した。

8:メリー・ゴー・ラウンド【21:43〜】
山下達郎 作詞・作曲
『MELODIES』6曲目。
この曲や「あしおと」などは、ドラム、ベース、山下のキーボードという3人でベーシック・トラックが作られ、それにギターやパーカッション、多重コーラスを加えて完成させるという方式でレコーディングされていた。この時代、アルバムに必ず収録されていたファンク路線の曲も自分で歌詞を書くとレイ・ブラッドベリ的な世界という内容になり、本作中、詞に関して最も気に入っている作品だという。詞は恋人と二人で夜中に遊園地に忍び込んでいくというイメージで、途中に出てくる「色褪せた水玉のベンチ」は、昔後楽園ゆうえんちに実際にあったものがモチーフになっている。レコーディング当初、間奏にはサックスやギターのソロを入れようと試したがどれも今ひとつしっくりこなかったため、コーラスのみで仕上げられた。当初、スタッフには曲中のカウベルを模したボイスパーカッションが極めて不評だったという。僕個人的にもお気に入りの曲の一つ。
つなぎとしては前の曲からボーカルが入るまで約40秒、かなりロングに繋いでいる。

9:LOVE TALKIN' (Honey It's You)【25:18〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
この時期、山下は青山純と伊藤広規と3人で練習スタジオにこもってリズム・パターンを開拓していて、その中から生まれた作品。
次の曲のへはほぼほぼカットインように感じるかもしれないけど、[only you, only you, only you]の最後のyouをかなりスローにして次の曲の入りとタイミングを合わせている。

10:DAYDREAM【29:40〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
『RIDE ON TIME』2曲目。
山下によれば吉田美奈子が彼に提供した詞の最高傑作だとし、日本語の乗りにくい細かな譜割りのメロディーをクリアするために、アクリル・カラーのチャート表から詞を作り上げる発想は彼女以外には出来ないワザだという。ライブ映えする曲ということで、その後も数多く演奏されている。
次の曲へのつなぎは、キラキラした感じを意識して繋いでいる。本MIXの中でもお気に入りポイントの一つ。

11:新(ネオ)・東京ラプソディー【32:39〜】
山下達郎 作詞・作曲
『僕の中の少年』1曲目。
キラキラとしたイントロが印象的で、夜景輝く首都高速を思い浮かばせる。もとは『POCKET MUSIC』のストック曲。フレディ・ハバードのアルバムを聴いてフリューゲルホーンが入った曲を作ろうとしたが、途中でハーモニカも加えることにしたという。「歌詞が浮かばず、夏の暑い日に都心環状線を2周して構想を考え、(目黒線の)天現寺で下り、有栖川公園で車を停めてアウトラインを書き、家に帰って膨らませた」と語っている。また、曲のタイトルを決めた時に「東京ラプソディ」の一節を曲の最後に入れる事を思いついたが、著作権法確立前の昭和11年(1936年)の曲のため、高額なロイヤリティを要求され、一時はどうなることかと思った、とも語っている。このアルバムを制作していた頃は、ビデオや上映会通いなどで戦前の日本映画を数多く観ていた時期であり、そこから生じた昭和初期の文化へのシンパシーと、異なる時代を生きる自分と照らし合わせてみたいとの思いから、この曲を作ったという。

12:INTERLUDE I【36:01〜】
山下達郎 作曲
「INTERLUDE I」「INTERLUDE II」とも、曲間に挟むために作られた短いインスト・ナンバー。未使用に終わったが、このアイデアはアカペラのインタルードに変更され次作『FOR YOU』で実現した。1990年に『RIDE ON TIME』リマスター盤にボーナストラックとして収録された。
本MIXにおいては本来の意図である転換として、また前曲の新(ネオ)・東京ラプソディーのフェードアウトにも変化をもたせたかったことから本ミックスに採用した。

13:夏への扉 (The Door Into Summer)【36:57〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
『RIDE ON TIME』5曲目。
もともとはキーボードの難波弘之が全曲お気に入りのSF作品とその作家に捧げたモニュメント・アルバム『SENSE OF WONDER』に提供曲した曲を山下自身でレコーディングしたもの。アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインの同名小説のストーリーをもとに吉田美奈子が詞を作り、山下が曲を当てはめた。歌詞の「ピート」は主人公が飼っている猫、「リッキー・ティッキー・タビー」は主人公の親友マイルズの義理の娘、フレドリカ・ヴァージニア・ハイニック・・・通称リッキー。小説中で主人公がリッキーに書く手紙には、いつも「親愛なるリッキイ・ティッキイ・テイヴィー」と書いてある。この「リッキー・ティッキー・タビー」は極めて英文学的で、もともとはディズニーの「ジャングル・ブック」の原作に出てくるマングースの名前である。
この曲から似たようなベースラインが続くので、奏者による違いやドラムとの対比など楽しんで聴いてもらいたい。 

14:RAINY WALK【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
『MOONGLOW』3曲目。
プロデュースを手がけたアン・ルイス用のストック曲だったが、気に入っていたので譲ってもらい、自分用に仕上げた曲だというシカゴ・ソウルのスタイルのナンバー。高橋幸宏・細野晴臣・松原正樹・佐藤博でリズムが刻まれる。ドラムは途中からタムがオーバーダブされ、フェードアウトに向かうところではリズムパターンが微妙に変わる。前曲とベースのリズムが似てるけど若干違うので、少しのズレで大きな違和感を感じてしまう。ミックスで苦労したポイントでした。

15:あまく危険な香り【:〜】
山下達郎 作詞・作曲・編曲
もともとはドラマ主題歌として制作されたため、シングル盤のみで、スタジオアルバムには収録されていない。そのため『GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』に収録されている。もともとは誰かベテランのシンガーに歌ってもらうことを目論んで作った曲だったが、ディレクター小杉理宇造の勧めで自身のシングルとして発表することになった。間奏の低音のピアノのフレーズ等、それまでなかった“アダルト路線”の曲調が逆に新鮮に感じてもらえたようだという。

16:PAPER DOLL【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
『GO AHEAD!』8曲目。
シングル用にと1978年春にレコーディングされた作品だったが、レコード会社に「売れない」とシングル発売を拒否された。この曲は「BOMBER」で説明したように当時山下にとっては不遇な時代であり、メディアに対する憂鬱からペシミズムに満ちた一曲。ギター・ソロも山下自身の演奏だが、ワウが不得手なので、後からペダルを手で動かしている。楽器のソロ回しがしやすいことから、ライブでよく演奏されている。
つなぎ的にはこの曲と次の曲のドラムがバッチリはまっていて気持ち良く、個人的に気に入っているポイントの一つ。

17:DANCER【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
『SPACY』5曲目。
都立竹早高校在学時に北朝鮮に帰国したブラスバンドの先輩を思って書いたという。村上による独特な16ビートのパターンに、山下のアレンジによるストリングスとFender Rhodesが奏でるクロースな和音が乗ることで、奇妙な閉塞感に包まれたサウンドが構築されている。
後に、デフ・ジャムの女性シンガーニコル・レイは、この曲のトラックをほぼそのまま使用し、同じくデフ・ジャムに所属しているビニー・シーゲルをフィーチャーした"Can't Get Out Of The Game"というブレイクビーツナンバーを2004年に制作。彼女のアルバムに収録予定であったが頓挫している。海外では非常に人気が高くレコードは高額で取引されている。
その他サンプリングとしてはD.I.T.C.クルーの中核を担うShow & AGのAGがParty Artyをfeat.したB2「Party Hard, Hustle Hard」を2010年にリリースしている。
上記のタイトルを参考までに載せておく。
「Nicole Wray / Can't Get Out The Game feat. Beanie Sigel」
「A.G. / Party Hard, Hustle Hard」
次の曲のつなぎは、Echoのエフェクトをかけて飛ばしてカットインしている。

18:WINDY LADY【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
『CIRCUS TOWN』2曲目
もともとはシュガー・ベイブ後期のレパートリーだったが、レコーディングの機会がなく1976年アメリカ、NY、LAで録音された『CIRCUS TOWN』に収録することになった。
山下はシュガー・ベイブのメンバーとして1973年にプロ活動を始めたが、3年後の1976年に解散、仕方なくソロになったという。バンド解散による精神的ダメージと、シュガー・ベイブで目指した1960年代テイストやレコード・マニア的趣味性が当時の日本の音楽状況にまったく受け入れられなかったことへの挫折感から、自分がこの先どうすればいいか、まったくわからなかったという。ソロでやって行くにしても、どこか客観的な立場に一度身を置いて自身の音楽的力量を判断してみないことには前に進めない。これがソロ・アルバムを海外で録音しようと思い立った理由だった。間奏のサックスはマンハッタン・ジャズ・クインテットのメンバー、ジョージ・ヤングによるもの。

19:LOVE SPACE【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
『SPACY』1曲目。
イントロ冒頭の佐藤博のピアノのフレーズは、佐藤が本番になっていきなり思いつきで弾き始めたものだという。このアルバムの最初にレコーディングされた曲。16小節のテーマがひたすら繰り返されるという趣向の作品というのを以前から作ってみたいというところから書き下ろされた。
次の曲への繋ぎはこの曲のトランペットを残しつつ丁寧に繋いだ。

20:MUSIC BOOK【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
『FOR YOU』2曲目。
吉田美奈子がノートに書きとめていた“ミュージック・ブック”という一節から書き起こされた作品。アルバムの色合いにバリエイションを出そうという目的で、この曲だけ異なるリズム・セクションでレコーディングされている。全曲同じメンバーでも良かったとも思うが、これはこれで好きな演奏だという。

21:CIRCUS TOWN【:〜】
作詞:吉田美奈子/作曲:山下達郎
『CIRCUS TOWN』1曲目
ニューヨークでよく演奏されていた16ビートの曲をこの曲で再現した。ニューヨークをイメージした曲。間奏のサックスはブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ末期のメンバーで、ブルース・ブラザーズ・バンドに参加したことでも知られるルー・マリーニ。冒頭にピッコロで演奏されるパッセージは、ユリウス・フチークの「剣闘士の入場」と思われる。

22:あしおと【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
「MELODIES(メロディーズ)」の8曲目。
夕暮れ時に見かける女性への淡い恋心を歌った曲。山下自身、気の弱い男の片想いの歌は大好きで、この曲は盛り場のストリート・サイドにある花屋の店員が主人公という設定のシカゴ・ソウル風味の作品。いつも夕暮れ時に店の前を通り過ぎる会社帰りのOLへの淡い恋心の歌である。
秘めた思いをどこか物悲しいテンポ感のあるメロディーにのせている。

23:SOLID SLIDER【:〜】
作詞:吉田美奈子/作曲:山下達郎
『SPACY』10曲目
当時のいわゆるAORの線をねらった一曲。この時代はレコーディングに使える予算と時間が限られていたため、短時間で演奏をまとめやすい曲作りを心掛けていたという。いかにアイデアのあるリズム・パターンを考え出せるか、この曲もその典型だという。ショートバージョンとロングバージョンがあり、本MIXにおいてはロングバージョンの途中でサックスソロ省略化、シングルバージョンでは収録されていない坂本龍一のピアノソロに繋いでいる。ドラムに上原裕、ベースに田中章弘。坂本龍一のエレクトリックピアノと、吉田美奈子のコーラス。エレキギターは大村憲司。ロングverは聴きどころが多くどれも捨てがたいが、7分強あり他の曲とのバランスも考え、上記のように短縮した。

24:SPARKLE【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
友達から5万円で購入しサブギターとして1980年に購入した茶色のフェンダー・テレキャスターが山下にとって運命的な大当たりとなり、このアルバム以降すべてのレコーディングとライブで使われることになる。山下自身も後に代表作と語るこの曲は、このギターの音色を生かした曲を作りたいとの思いから書かれたもの。ライブでもオープニング・ナンバーとして数多く演奏されている。また、2002年リリースのBOOのシングルsmile in your face-Featuring Muroでこの曲が大胆にサンプリングされている。
裏で全体を包み込むようなシンセの音が壮観な印象を与えてくれて、とても美しい。
つなぎはここもエコーで飛ばしている。

25:DOWN TOWN【:〜】
伊藤銀次 作詞/山下達郎 作曲
シュガーベイブ『SONGS』の2曲目。
元々はキング・トーンズ15周年記念アルバムに提供する予定だった曲。その企画自体が立ち消えになり、その後シュガー・ベイブがナイアガラ・レーベルからレコーディングに入るという話が決まったため『SONGS』のレコーディング曲に加えることとなった。
次の曲のへは単純なカットインだが、比較的気に入っているポイント。

26:SUNSHINE -愛の金色-【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲
『MOONGLOW』8曲目。
シンプルに刻む8ビートで淡々とした印象ながらも、難波弘之PLAYによるピアノがさり気なくオシャレ気持ちいい。
『FOR YOU』発売時、プロモーション用にピクチャー・レコードが制作され、そのB面用に作られたテープ編集によるメドレーである「9 MINUTES OF TATSURO YAMASHITA」(『GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』に収録)ではこの曲のサビの”サンシャイン”の”サ”から”サイレントスクリーマー”にカットインで繋げられており、山下的には遊び作ったという話だが、アイデア的にDJっぽく面白いので必聴だ。(真似しようかなと思ったけど、流石にやめました)

27:LOVELAND, ISLAND【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
『FOR YOU』7曲目
元々は、ビールのCMのため書き下ろされた楽曲で、ブラジルの路上で踊る女性のフィルムを観てBPMを算出し、そのテンポに合わせて作られた。
山下によれば「サンバとマイアミTKビートを合わせたような曲調と1人多重コーラスの世界は、
"夏だ、海だ、タツローだ!"という当時のリゾート・ミュージックとして山下達郎音楽のまさに典型だった。」という。
ちなみにこの曲のPVで、キレのあるステップでMJ風のダンスをしているのはジャニーズの東山紀之。(最初は気づかなかった)

28:FUNKY FLUSHIN'【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲
「永遠のFULL MOON」5曲目。
「FUNKY FLUSHIN'」は「BOMBER」の路線で、よりポップなメロディーを、という意欲から生まれた曲。以後数年間、山下はこうしたポリ・リズムのパターン・ミュージックを作り続けて行くが、リズムの構築という点ではこの作品に一番愛着があるという。このトラックはリズム隊の録音グレードや毎夜の徹夜の歌入れで声のコンディションがいまひとつだったことなどが心残りで、通常再録音に否定的な見解を取っている山下としては珍しく『GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』で1982年に再録されている。
本ミックスでは、再録版はリバーブがかなり効いており、他の曲とのバランスを考え1979年のオリジナル版を使用している。

29:愛を描いて –LET'S KISS THE SUN【:〜】
吉田美奈子 作詞/山下達郎 作曲・編曲
シングルとしてリリースされ、後にアルバム『MOONGLOW』10曲目に収録。山下にとって初のシングル・タイアップ。曲がなかなか作れず、スタジオに向かう車の中で、もうダメ、出来ませんでしたと土下座するしかないと、原宿の交差点に差しかかった時、ポッ、とフックが湧いて出て助かったという、冷や汗の想い出とともにある曲だという。

30:高気圧ガール【:〜】
山下達郎 作詞・作曲
『MELODIES』2曲目。
イントロをアカペラとパーカッションでスタートするアイデアはずっと前から持っていたが、実際に試みたのはこの曲が最初。MIX内では、山下の試みを不意にする形なので気が引けたが、都合上イントロはカットしている。途中の溜息は竹内まりや。
この溜息をEchoで飛ばして、最後の曲へいざ参らん。

31:パレード'82リミックス・ヴァージョン【:〜】
山下達郎 作詞・作曲•編曲
「パレード」は、ナイアガラ・トライアングル(大滝詠一、伊藤銀次、山下達郎)のオムニバス・アルバム『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』に収録。フジテレビ系『ポンキッキーズ』のエンディングテーマ使用を機にシングル・カットされたが、イントロのピアノ・ソロとエンディングの“お祭りSE”がカットされている“'82リミックス・ヴァージョン”で収録された。本ミックスではリミックスバージョンを使用している。
元々は、シュガー・ベイブ時代のレパートリーとして1974年春頃に作られた作品。レコーディングの話が持ち上がった際、大滝からシングル向けの曲を書くように依頼され書いたものの「シングル向きではない」と言われたことから、シュガー・ベイブでは正式にレコーディングされなかった。その後、「捨てておくにはもったいないし、かと言ってシュガー・ベイブのサウンドとしてはもう古い感じなので」としてアルバム『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』に山下のソロ作品として収録された。山下によれば「もっとも、当時はシングル発売といったって、ヒットなど夢のまた夢という時代だったから、言う方も言われて作る方も、しごく観念的な話でしかなかった」とし、「コタツの中で安物のワインを飲みながら一晩で書いた記憶がある。ギターで曲を作ったから、ああいうビート感が出たのだ」という。
僕の結婚式の退場曲に使用されたことはあまりにも有名。思い出も重ねてこの曲を最後にした。

■最後に
ご視聴ありがとうございました。
解説も含めて楽しんでいただけたら嬉しい限りです。MIX cloudにコメントとかイイネ(?)とかしていただけると、ヨロコビーフ。

ご連絡いただければデータでお送りすることもできます!!いやむしろ、欲しいと言ってくれたら嬉しいです。